TRAIN STATION DESIGN COMPETITION, GUNMA JAPAN, 2011 「紡がれていく駅」 上州富岡駅舎設計提案競技

sharisharishari collaborated with Emeraude Architectural Laboratory Co.Ltd to submit this entry to the competition held in Japan in June 2011. This design proposal was inspired by traditional silk industry in this local area. We proposed a structure like spinning wheel and silk strings and embodied time/process within the structure. We design the station as a cultural spinning wheel of local history/memory.

本提案においてsharisharishariはエムロード環境造形研究所と恊働し上州富岡駅設計提案競技に参加した。

紡がれていく駅

富岡製糸場(世界遺産)の玄関口にふさわしい駅舎空間

それは富岡製糸場の誇りと未来の富岡市のために、ひとびとのための空間を一緒につくりあげられるような、デザインのなかに将来の変化をあらかじめ内包した、みなで歴史を紡ぎ上げていく駅である。通路も休憩スペースも、そして駅舎としての必要居室たちも、周囲の「通り」の延長のように外部と優しく連続し、駅舎空間そのものが「糸のまち」を象徴するシンボル性を秘めながら市民の生活空間へと溶け出す。季節・気候・風土…、世界遺産を目指す富岡の様々な状況が市民と共に変化し成長し続ける、そんな象徴の場として成立する空間を目指した。箱のなかの生活からもれてくるひかりと、床下からライトアップされたファサードが、周囲にやわらかな光を投げかける。

富岡製糸場の最先端追求の気概を継承した構造デザイン ひとつひとつは弱い部材が重なり合い、繊細でありながら安全で安震な構造となる

構造のコンセプト ? 糸繰りと絹糸

単位面積あたりでは鋼材と同じ強さを持つと言われる絹糸。本提案における繊維状の構造とファサードのシステムは、絹糸を繰る際の糸車と糸になぞらえることができる。 内側から外に突っ張るフレームを、外側からテンションロッドが押さえ込む、緊張感のある構造である。テンションロッドはどぶ付けメッキされた鋼材のワイヤーである。長期荷重は内部の糸車状の構造で支えるが、地震荷重風荷重などの短期水平荷重にはこのテンションロッドが利く。フレーム上にぐるりと一周巻き付けることで、この抵抗力はあらゆる方向に対して働いている。 安全で安震な構造である。箱は、地上部分にあるものも含めて、地面には触れること無くフレームの中で浮いている。このことにより、電車の進入に伴う地表面の揺れから、内部空間の振動を軽減することができる。内部の構造に働く圧縮力と、ファサード表面に働く引張力は、建物全体に緊張感のある動的平衡状態な構造をつくりだす。ひとつひとつは弱いものが重なり合って全体構造を支えている。またこれは将来的に糸の数を減らしたり増やしたりすることも許容する、あらかじめ変化を内包したデザインである。コミュニティが必要とする機能を設計段階で反映させながら箱を付け替え、それに応じてロッドの引張力を調整することで、地域の歴史が紡がれるようにファサードをつくりあげていくことが可能である。

ファサードと空間のコンセプト ? 繊維状のファサード

レンガ倉庫や富岡製糸場における組石造の重厚な構造(圧縮力)に対して、糸から布へと徐々に変化するような軽やかで繊維状の構造(引張力)がファサードに表れた建築を提案する。 ファサードの内部では、駅としての機能を納めたコアとしての箱の周りに、駅とランドスケープの中間のような、人の集まれる空間が生まれる。周辺環境に応じて敷地内を5つのゾーンに分け、それらの要素が敷地内にとけ込んできたようなオープンスペースが生まれるように箱を配置する。その上で、繊維状のファサードが敷地境界上をゆるやかに区切る。 ロッドが床下に巻き込んでいく様子は床端部の隙間から見える。

構造解析 ? ANSYSを使ったモデリングによる構造の検討過程

提案している構造をモデル化し、垂直方向に働く長期荷重(自重)フレームに平行に働く水平短期荷重、直交に働く水平短期荷重、それぞれについて構造解析を行い、変形量の大小を比較した。(4本のフレームのうち下の2本は地中で固定されている)。内部フレームのみによるモデルでは、特に水平荷重に対して、上部のフレームや箱などに変位の大きな部分が見られる。テンションロッドを垂直に張った場合、内部フレームのみの場合に比べて長期荷重に対しての変位量に改善が見られるが、水平荷重に対しては変位の大きい部分が見られる。テンションロッドを斜めに傾けてランダムに張った場合、垂直に張った場合と同様に長期荷重に対しての変位量に改善が見られるほか、水平荷重に対しても大きな改善が見られる。ゆえに、ランダムに張られたテンションロッドのファサードは地震等に対して強い。構造解析ソフトによるモデリングによって、ランダムに見えながらも合理的なテンションロッドの配置を導きだす。

駅を中心とした人に優しい地域拠点として、 紡がれたファサードの中で箱と箱のあいだに生まれたヒューマンスケールの空間が、歴史ある富岡と新しい富岡のいきいきとした出会いの場をつくりだす

周辺ランドスケープとの連続性を意識して機能の配置する。乗客が利用する施設は地上部に、管理施設は駅舎全体を見渡せるように空中に配置されている。 箱の大きさや高さの違いが、機能の違いを視覚的に示唆する。オープンスペースに面した箱の側面には電鉄や富岡製糸場の情報が掲示される。訪れたひとは箱の間の空間を自由に逍遙し休むことができるが、雨よけ風よけのある待合室も改札の西側に用意されている。敷地が道路や線路と接する付近では防音のためにファサードの線材が密になり、人の出入りが多い改札付近では開口のため疎になっている。電鉄事務室を挟んで改札西側の待合室付近では、ファサードの線材が密になり布のようになっているだけでなく風よけも設けられている。

コスト縮減や維持管理の配慮

ファサード:耐候性の処理を施した無数のスチール製テンションロッドがつくる繊維質の立面は、いわば橋梁や鉄塔のような工作物として建築的造作工事の不要な構造体となる。これが工期を大幅に削減できる要素ともなっている。
箱とフレーム:構造体の組み立てと平行してあらかじめ工場でできるだけ製作を進めておくことで、取り付け工事着工前からエリア外に任意に設置することが可能であり、駅事務室やハイヤー事務室などをあらかじめ工事中の仮設駅舎として利用することでコストを削減する。 また箱に必要最低限の機能だけをコンパクトに納めることにより、気積の小ささが空調負荷を軽減し維持管理のコストを下げる。
地形:ランドスケープの連続としての対候性のウッドデッキは 歩行困難者のためにレベル差のない移動等円滑化経路を確保したうえで、ゆるやかな起伏を持ち、箱との関係で敷地全体にさまざまな待ち合いスペースをつくる。
敷地:ホームは現状を生かし、スロープの下端と現踏切位置の交差部分に改札を設ける。ほりこまれた地形の下の空間には非常時のための備蓄倉庫を設けることができる。また、小さな部材の集積からなる大空間は、施工時において限られたスペースでの作業を可能にする。